ドラゴン・テイル

「どうも、うちのコパンが大変な失礼をしたそうで……」

 小太りなピクシーは、部屋に入るや否や、そう言って頭を下げた。隣でルッソも頭を下げる。

「いや、もう良いよ。っつか、出来れば何か拭くものくれ…」

「おぉ! そうですな! 風邪を引かせてしまったらそれこそ謝罪のしようがない。服を乾かせましょう。ルッソ」

 小太りのピクシーがルッソに視線を投げる。

「はい。クレイグ様、どうぞこちらへ」
そう言うと、クレイグを連れて部屋から出て行った。

 小太りのピクシーは、それを見届けてからウルに向き直る。

「どうぞどうぞ、お座り下さい。本当に申し訳ありませんでした」

 壁に沿って段が一段飛び出している。どうやらそれが椅子のようだ。

「いや、さっきクレイグが言ったように、もう気にしなくて良い。それに、俺は何も被害を受けていないしな」

 椅子に座りながらウルが言った。

「それより、聞きたいことがあるんだ」

小太りのピクシーを見据えて言った言葉に「私で分かることでしたら何なりと」と言った表情で、パチパチとまばたきをする。

「ルーヴァに入る前に、この燭台の炎に似た物を見た」

 壁に添えてある燭台に灯る炎に視線を移す。

「どこにでも使われる簡単な魔法です」
 珍しい物ではありません。

 小太りのピクシーが同じように燭台に視線を移して答えた。

 小さく頷いて、ウルは言葉を続ける。

「そうだな。炎だけなら、よく使われる。だが、炎でメッセージを残すのは稀だ」



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