ドラゴン・テイル

 小太りのピクシーは、驚いた顔でウルを見つめた。

 ウルは言葉を続ける。

「ルーヴァが襲撃を受けたのは、知っているか?」

 コクコクと頭を縦に振る小太りのピクシー。

「炎に書かれた文字は『生存者有り』。
 だが、俺たちには生存者は見つけられなかった」

 大きく目を開いてウルの言葉を聞いていた小太りピクシーが、何かを思い出したように口を開いた。

「ルーヴァには、特定の場所は存じませんが、隠し神殿があると聞きます。そこに隠れていたのではないでしょうか…?」

「隠し神殿?」

 オウム返しに問うウルに頷いて、話を続ける。

「はい。遙か昔の六千年戦争で、ドラゴンのリーダーが持っていた宝玉をその神殿に封印したと……我々ピクシーの言い伝えで…。
 確かな文献に残されている訳ではないので、真偽の程は分かりかねますが…」

 ウルにとっては初耳だ。ラーマも、宝玉の事は一言も話さなかった。

「……そうか…。だから、ナイトではなく、クルセイダーが来たのか……」

 ずっと引っかかっていた何かが、ウルの中で解けた。

 文献に書かれなかった宝玉の存在。

 隠し神殿の事は、隣町にいるウルでさえ知らなかった。そのルーヴァに住む者でもほとんどが知らないだろう。

 おそらく、ロンドも知らなかったのだ。だから、すぐ近くにあるであろうその神殿では無く、遠いザイルへ逃げようとした。


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