ドラゴン・テイル

「あのルーヴァにあった魔法の炎、あれはひょっとしたらピクシーが作った物じゃないか?」

 ウルの言葉に、ラストルは難しい表情を浮かべた。

「否定は出来ませんが……、肯定も出来ません……」

 少し考えるように、顎に右手を添える。

「我々ピクシーは、基本的に単独行動を取ることはありません。誰かがそのメッセージを残したのなら、必ずそれを見た者がいるはず。ですが、私にそのような報告はきておりません」

 ふむ……。ウルは考え込むように視線を足下に落とす。

「ピクシーじゃなくて、人間が残したんじゃないのか?」

 話がよく分からないと言うように、キョトンとした表情を浮かべるクレイグが言った。

「確かに人間が残した可能性もあるが…、あんな辺鄙(へんぴ)な場所に残すなら、ザイルに来て確実に人を連れてきた方が良いと思うが……」

 それもそうか……と、クレイグは口を噤(つぐ)んだ。

 そんな様子を見ていたルッソが、ラストルに向かって思い出したように口を開く。

「ラストル様、昨日でしたら単独行動をしたピクシーが一人います」

 突然の報告に、ラストルは大きく目を見開いた。

「それは誰だ?!」

 何故報告しなかったのだと、少し怒った表情で言う。

 ルッソは、申し訳なさそうに少し頭を下げ、そのピクシーの名を口にした。





「コパンです」



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