ドラゴン・テイル

 キスティンは、クレイグの幼なじみだ。
 町を歩けば振り返る者はいないと言っても過言ではない程完璧な容姿をしている。
 この五年、クレイグからキスティンの名前を聞かなかった日は無いと断言出来るほど、ウルは毎回聞かされていた。
 興味の無いウルはちくわ耳で聞き流していたが。

 実際に会わされた事もある。
 淡いサファイアブルーの髪に同じ色のくるっとした瞳。白くてきめ細かい肌。
 少し小柄なその体はスラっとした細身。

 クレイグが自慢したくなる気持ちも分からなくはない。
 彼女を見て、ウルは思った。

 だが、やはり興味無し。

「………で、俺を連れて行くって約束したわけか」

「ご名答!」

 わざとらしく明るい声でおどけたように振る舞う。

 はぁ……。

 ウルは短くため息をついて、右手の手のひらを上に向け小さく上げる。

 瞬間、その手のひらに明かりが灯る。オレンジ色を帯びて小さく揺れる炎。


「ぎゃーーーっ!! 待てウル! はやまるな! 話せばわかるー!!」

 クレイグは物凄い勢いで後ずさり、ウルから距離を取った。

 ウルは、魔術師の才を持っている。
 ある時を機にその力は大きくなり、今では町一番の術士と言われるほどとなった。

 ジッとクレイグを見る。
 クレイグは少し離れた場所から必死にウルをなだめている。

 周りにいた人達の視線も集まり始めた。

 こんな町中で魔法は無理だな……。
 手のひらで煌々と燃え上がる炎を消す。

 尚も必死で説得しているクレイグ。
 野次馬も増え始め、早くこの場を立ち去りたかったウルは、クレイグを諦めさせるのは無理だと判断し、しぶしぶクレイグの誘いを受けた。

 ……と言うより、受けるしかなかった。


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