ドラゴン・テイル

「待った! キスティン、不用意に近づいちゃ駄目だ。
 こいつ、すげぇ悪戯するんだぜ」

「そーなの?」

 押しとどめるクレイグを、キョトンとした顔で見つめるキスティン。

 そんな二人に目も向けず、コパンは辺りをキョロキョロと見回した。


 ルッソの姿を探すように……。


 一頻り(ひとしきり)辺りをフラフラと探し回った後、再び座り込んで涙を流し始めた。



 ─……ルッソは、恐らく来ない……─



 コパンが眠った状態で転移された時に、ウルもクレイグもどこかでぼんやりと分かっていた。

 それでもあの場で待ち続けたのは、コパンに理解させるため。

 眠った状態で送らなければならない程、コパンは必死ですがりついたのだろう。

 頬に涙の筋がいくつもあったのを見逃さなかった。


 ウルは、座り込んだコパンに近づいて腰を落とす。

「気分はどうだ?」

 声をかけるが、コパンはピクリとも動かない。

「お前もトモダチ亡くしたんだな」

 泣いたとき、子供が肩でしゃっくりをするように、コパンの肩が揺れる。

「俺もだ」

 ウルが、小さなコパンの背を優しくさすった。
 一瞬だけ、ビクンッと体を震わせたが、逃げる出もなく、その場を動かずコパンは肩を揺らす。


_
< 146 / 257 >

この作品をシェア

pagetop