ドラゴン・テイル
祭りは、ウルに言わせると実にくだらない物だった。
つまんねぇ……。
今日と言う日は、ウルにとって恐怖の記憶を呼び起こす以外何物でもない。
クレイグの強引な誘いにしぶしぶ出てきたものの、やはり楽しめるものではなかった。
十年経った今でも、鮮明に残る記憶。心に刻まれた後悔。耳にこびりつく声……。
……つまんねぇ…。
何度となくため息をつく。
「あ……あの…」
ふいに、隣にいる少女が声をかけた。
視線だけ彼女に向ける。
ウルより二十cm程小さく見える少女は、少し上目遣いでウルを見上げていた。
「すみません、退屈ですよね……私なんかといても……」
風が少女の赤い髪を揺らした。
同じ色の瞳が悲しげにウルを見つめる。
「……別に」
ふぃっと視線を逸らした。
この少女がキスティンの連れだ。
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