ドラゴン・テイル

 ぽっかりと開いた大地から這い出てきたのは、真っ黒い、大人一人分位の大きさがあるヒルのような生き物。

 次から次に這い出てくる。

「うぇ……気持ち悪ぃ……」

 しかめっ面で声を漏らすクレイグ。

 無数に這い出てくるヒルの一匹が、そんなクレイグに向かって飛びついてきた。

「触んなッ!」

 クレイグが、下から突き上げるように一閃する。

 両断されたヒルは、ベシャっと音を立てて大地に落ちた。

 そのまま、溶けるように地面に吸い込まれて、その跡が黒く残る。

「……何なの、こいつら……」

 キスティンが呟く。
 そのキスティンを庇うように立つ豹が口を開いた。

「マーダーリッチ……。地中深くに住み、大地の栄養を吸収するモンスターだ」

「うぉぉっ喋ったーーーッッ!」

 叫ぶクレイグの声を全く聞かず、豹は続けた。

「普段、こいつらは地中深くを移動し、地上に出てくることは滅多にないのだが……」

 話している間も、どんどんと辺りが黒い蛭─マーダーリッチに覆われていく。

 後退しながら、クレイグが舌打ちした。

「これ全部潰すの? 俺ヤだなー……」

 剣を構えたまま愚痴る。

「……何でお前が言うと緊張感が消えるんだろうな……」

 ウルの言葉に、クレイグが抗議した。

「なんだとぅ?! 至って緊張感ありまくりだろーが!」

 ─……やはり緊張感がない……。

 クレイグを華麗にスルー(無視)し、呪文の詠唱を始めるウル。

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