ドラゴン・テイル
……チュン……チュンッ
小鳥のさえずりが木霊する。
辺りには木が生い茂っているのだろう、高い所で風が吹く度に葉がすれる音。
冷たい地面に、草の感触は無い。
─……道……か…?
ウルは、ゆっくり瞼を上げた。
辺りは明るく、木陰の合間を縫って差し込む日差しが、優しくウルの頬を照らしていた。
─…ここは……?
ウルの横たわる場所の両脇には背丈の短い雑草が生い茂っている。
小さな小道に、ウルは倒れていた。
「……ッ!」
体を起こそうとしてバランスを崩し、再び横たわる。
後ろ手に縄で縛り上げられている事に気づいた瞬間、ウルはハッともう一度辺りを見渡した。
「クレイグッ! キスティンッ!」
叫んでみるが、声は木々の間を木霊すだけで返事は無い。
「ラーマッ!! どこにいるんだっ!」
返ってくるのは、木々の葉を揺らす風ばかり。
ウルは、必死に体を起こす。
「くっそ……思いっきり縛りやがって…」
縄を解こうともがくが、外れる気配はまるでない。魔法で切ろうにも、後ろ手に結ばれているせいで印が組めない。
とにかく、人の居るところに行こう…。
やっとの思いで立ち上がり、辺りの様子を伺う。
どっちに行けば人里に出られる……?
道の先、どっちを向いても同じ景色が広がっている。
─…参ったな……。
こんな状態でモンスターに襲われたら、赤子も同然だ。今が陽のある時間帯でよかった。
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