ドラゴン・テイル
ウルは来た道を戻った。
あの崖は、とてもではないが越えられない。浮遊魔法を使えば行けないことは無いが、今のウルに魔法は使えない。
この縄さえなければ……ッ!
苛立たしさがウルの歩調を早める。
どれくらい歩いただろう。
着実に重くなる足を無理矢理動かし、それでもウルは歩き続けた。
辺りは段々と赤みを帯び、夕暮れが近い事を知らせる。
マズいな……。
フラフラになりながらも、ウルは前を見据えて歩く。
緩やかなカーブを過ぎた頃、前方で木々が途切れているのが分かった。
……出口……?!
倒れそうになりながらも、走った。
そこに広がるのは、広大な川だった。向こう岸には、大きな時計台とその下に広がる大きな街。
ここは……一体どこなんだ……?
見たこともない巨大な川と街を前に、ウルは地面に膝をついた。
「……う…ウル……さん…?」
女性の声が聞こえる。
力なく顔を動かし、声がした方に視線を向けると、そこに立つ女性の姿に驚いた。
「………れ…な……?」
紛れもなく、そこに立っていたのはレナだった。
「やっぱりッ! ウルさん、どうしたんですか?! こんな所で……ッ!」
駆け寄るレナは、ウルを縛る縄を見て顔をしかめた。
「ヒドい……一体誰がこんな事を…ッ!」
レナに縄を解かれ、ようやくウルの腕に自由が戻った。
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