ドラゴン・テイル

 がらぁーーーーんっ
 がらーーーん………

 突如、町中に鐘の音が響きわたった。

 町の中央にある警報用の大鐘だ。

 モンスターに襲われた時、モンスターを威嚇する意味も兼ねて、いち早く町人達に知らせる為に作られた鐘。

 十年前の事件を教訓に作られた物だ。


「あ! 祭りが始まる!」
 ぱっと顔を輝かせて、キスティンが急ぎ足で鐘のなる方へ向かった。

「えー?! ちょ、キスティンちゃん?! まだお代払ってねーよ!」
 ゆっくり選んでいたクレイグが慌てて声をかけるが、キスティンはすぐに人混みの中に姿を消してしまった。

「………あ、あの…私が払いますから…」
がっくりと肩を落としたクレイグに、おずおずと声をかけるレナ。

「いや、いいよ…。レナちゃん、ウルの分も払ったんだろ? 気持ちだけ頂く…ありがとな……」

 クレイグはレナの申し出を丁重に断る。

 しょんぼりして財布を出そうとするクレイグを横目で見ながら、お金を払おうとするクレイグを遮り、ウルはお代を払った。

 さすがに哀れで見ていられなかったのが正直なところ。

「友よーー!」
 先程までの怒りはどこへやら。クレイグがウルに抱きついてきた。
「ヤローに抱きつかれても嬉しかねぇ!」
 ウルはクレイグを蹴り離した。

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