ドラゴン・テイル
レナは堅く瞼を閉じ、自分の肩を抱きしめると前屈みに体を傾けた。
「何もしていないのに……何故追われるのでしょうか……」
余程怖かったのだろう、僅かに声が震えている。
「レナ……。無理についてくる事はないんだ。キスティンが回復したら、どこか遠い所に住むと良い」
答えは、無かった。
答えを強要する気も無いし、そんな権利も無いウルは、ワイバーンがホバに着くまでの間、それ以上の言葉を口にすることはなかった。
ホバの街に着いたウル達は、急いでキスティンのいる宿へ行くと、医者に薬草を渡しキスティンのいる部屋に入る。
「キスティンッ!」
レナが、ベッド横たわるキスティンを目の当たりにして悲鳴に近い声を上げた。駆け寄り、顔をのぞき込む。
全く血の気が引いてしまったキスティンの顔を見たレナの瞳から、大粒の涙が溢れ滴り落ちた。
その様子を見ていたウルが、辺りを見渡して近くにいた盗賊の一人に声をかける。
「クレイグはどこにいった? コパンも見あたらないみたいだが……」
盗賊の男が困ったような表情を浮かべて言った。
「それが……ここから東へ行った森の中で光る竜を見たって話しを聞いた途端飛び出して行っちまいまして…」
その言葉に、ウルだけでなくレナも瞠目した。
光るドラゴン…?
もしかして、ラーマか?!
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