ドラゴン・テイル

 部屋から飛び出すウルの後ろから何やら盗賊の男が声をかけるが、振り返る事無く宿を飛び出した。

 今は聞いている暇など無い。
 一刻も早くクレイグとコパンの元に行かなくては。

 ─あのバカ共がッ! ラーマはドラゴンだぞ?!
 厳重に警備してあるに決まっている。そんな所に行くなど、まさに飛んで火にいる何とやらだ。

 街を飛び出し、東に広がる森へと一直線に飛び込んだ。

「ウルさんッ! ま、待って……ッ!」

 森をしばらく進んだところで、後ろから聞こえたレナの声にギョッとして振り返るウル。

「何で来たんだッ! 危険だぞ、戻れ!」

 ウルは急いでレナの傍まで駆け寄ると、立ちはだかるように行く手を遮った。

 だが、レナは首を強く横に振る。

「戻りません。待つだけなんて嫌です!
 私、もう疑いません! だから……ッ」
 ─だから、連れて行ってください。

 ウルは、レナの顔を見つめた。

 少し赤い顔で、真っ直ぐに見返すレナの瞳は真剣そのもので。

 しぶしぶ、ウルは頷いた。

「絶対に離れるなよ」

 そう言うと、足早に進み始めた。

「……はいッ!」

 少し声を大きくして。
 レナ安心したように少しだけ微笑みながら、小走りで着いてきた。

 少し進むと、遠くに人の叫び声が聞こえてきた。

「何でしょう……クレイグさんかな…?」

 不安気なレナの声。

 ウルは先の様子を見ながらながら慎重に歩を進めた。


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