ドラゴン・テイル

 聞こえた声は、クレイグと聞き覚えの無い声。

 それは、近づくにつれ争うような怒号に変わっていった。

 と言うよりも、クレイグが一方的に叫んでいるようだが…。

「……誰と話しているんだ…?」

 足音を忍ばせながら近づくウルの背後で、レナが何かを呟いた。

 次の瞬間、僅かに風が吹きクレイグ達の声を運んできた。

〔ふざけんなよッ! お前なんかには絶対渡さねぇ!!〕

〔愚かな。素直に従えば、お前達を無罪放免にしてやろうと申し上げているのに…〕

〔俺たちは元々無罪だっつーの! てめぇで罪擦り付けときながら偉そうに!〕

〔……交渉決裂のようですね。不本意ながら、実力行使をさせて頂きます〕

 誰かの声がそう言った瞬間、辺りに殺気が満ちる。

 人数は、五人から十人といった所か。

「まずいな、クレイグ一人じゃやられる」

 ただでさえ傷を負っているのだ。まともに戦えるのかすら疑わしい。

 ウルはレナに隠れるよう告げると、小さく呪文を唱えながら声の聞こえた方へ走り出した。

「え、ウル?! 何でここに…?!」

 突然飛び出して来たウルに、驚いて言ったクレイグの声が森に響く。

 ウルはざっと辺りを見渡すと、正面に立つ男を睨み据えた。

 会ったことの無いその男は、クルセイダーと同じ真っ白な鎧の上から、銀色に光るマント羽織り、顔にはアイアンマスクを装着している。

 明らかに今まで出会ったクルセイダー達とは格が違う。


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