ドラゴン・テイル
出現
それは、何の前触れも無く訪れた。数人のクルセイダーとウル・クレイグの乱戦の中。
グルルァォォォッ
低く大きく響く咆哮に、全員が動きを止めた。
「な、何だ…?」
スキールの声。……と言うことは、この声の主はルイと関係無いと言うことか。
「おい、辺りの様子を見てこい」
スキールが近くのクルセイダーに命じると、彼は森の中に入っていった。
「よそ見すんなよッ!」
森へ入る姿を見送っていたスキールに向かってクレイグが剣を振る。それを、素早く引き抜いた剣で受け止めた。
「不意打ちですか? 感心しませんね」
交わる剣の刃の間から、スキールの真っ黒な瞳が覗いた。
「悪いな。綺麗事言ってられねぇんだ」
クレイグの返す言葉に、面白そうにその目を細める。
「いえ、構いませんよ。確かにその怪我では、自分の繰り出す太刀の衝撃に耐えるのがやっとでしょうから」
言うと同時に、スキールが後ろへ飛び退いた。突然自分を押し返す力が無くなり、思わず前屈みに踏鞴(たたら)を踏むクレイグ。
その頭上から、スキールが剣を振り下ろし……─
「ウォルファングッ!」
ウルのかざした手のひらから水の塊が無数に飛び出し、それを弾き飛ばす。
不意に襲った襲撃にバランスを崩したスキールが一歩下がった。その懐にめがけてクレイグが剣を振り上げる。
「チィッ!!」
舌打ちと共に再び一歩下がったスキールの鎧に、クレイグの剣先が僅かな傷跡を刻む。
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