ドラゴン・テイル

 ─シャンッ……
 シャンッ……シャンッ……

 唐突に、一定のリズムで鈴が鳴る音が聞こえた。一斉に辺りが静まり返る。

 ……シャンッ……シャンッ……

 鈴を持って、一人の少女が姿を現した。

 ゆっくり、鐘のある小さな建物の前にセッティングされたステージに上がる。

 裾の部分を赤で縁取りしてある白いロープに身をくるみ、手には先端に鈴の付いたスタッフを持っている。

 顔は、頭に被っている肩下に届く程の長いヴェールで見えない。

 ……シャンッッ

 ステージの中央にたどり着くと、一際大きな音を立てて足を止めた。

 出て来たときの歩調と同じように、ゆっくりとした動きでヴェールを捲る。

 中から現れたのは、綺麗に化粧を施した女性の顔。

 おぉぉぉ……

 どこからともなく感嘆の声が上がる程、その女性は美しかった。

 整った顔立ちで、琥珀色の髪をポニーテールに結んでいる。
 雪のように白い肌に付けた口紅も派手すぎず、清楚な印象を受ける。

「──竜の神よ。」
 凛とした声が、静まり返った町に響く。

「我らの心は、この町の平和を守りし守護竜と共にあります。我らの¨今¨は、竜の加護を受けているからこその物。ささやかながら、今ここに竜を讃える為の祭りを開かせて頂きます!」

 その言葉を皮切りに、わぁぁぁぁっと歓声が上がる。
 一斉に出店の客引きが始まった。それと同時に人の動きに激しさが増す。

「キスティ〜ン!」

 キスティンの姿を見つけたのか、クレイグが大きく手を振る。
視線の先を辿ると、見覚えのある髪色の頭が見えた。



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