ドラゴン・テイル

「スキール様ッ!!」

 森へと消えたクルセイダーが戻ってきたのは、ウルが地面に降り立った時。クルセイダーの放つ声に見向きもせず、スキールとウルは睨み合っていた。

「スキール様! ドラゴンが……」

 そこまで言って、クルセイダーの声が途切れる。

 その場にいた全員が、僅かに視線を向けたその場所には、クルセイダーの他にもう一人いた。

 クルセイダーよりも二回り程小さいその人物は、体つきから見ると女性。

 一瞬、レナかと思ったが、身にまとうのは少し長いローブ。

 髪の長さもレナより長く、その人物がレナで無いことを告げる。

 女性は、クルセイダーの首にダガーを当てていた。

 一歩、また一歩と、ゆっくり歩み寄り、月の光が顔に当たる場所まで出てくる。

 その女性を見て、ウルは驚愕した。

 黒く見える髪が月明かりの下で揺れる。
 僅かに幼かった頃の面影を残すその女性の姿に、ウルの記憶が蘇った。

 ─……嘘だろ………?
 何でここに居るんだ……?

 疑問が、脳裏を駆けめぐる。

「ドラゴン、逃げたよ」

 女性が、顔に笑みを浮かべた。

 声も顔も、ウルの記憶にある人物と類似する。

「邪魔してごめん。こっちも急ぎでさ」

 笑みを消さず、女性が続ける。

「宝玉を返してもらえる?」

 僅かに頭を横に傾けながら言うその女性は、間違いなくリムレットだった……─

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