ドラゴン・テイル

「り、リム…レット……?」

 掠れるウルの声。その声に、リムレットらしき女性が首を動かした。

「…リムレット……、この娘の名か」

 クックッと肩を震わせて小さく笑う。
 その全てがウルの記憶にあるリムレットのそれと違い、違和感を残す。

 訝しい顔をして、クレイグがウルに小声で声をかけた。

「…あれがお前の探してた子? なんか、俺の想像と全然違うな…」

 ウルも同じだ。様子がおかしい。
 何よりも、何故リムレットが宝玉を欲しがるんだ?

「…お前は、誰だ?」

「我が名はカスタール。お前達人間が、ブラックドラゴン(黒竜)と呼ぶ存在……」

 ─…黒竜……?
 一体どういう事なんだ……?

「…一体、何のご冗談を仰っているのでしょう、このお嬢さんは」

 スキールの呆れた声に、カスタールと名乗った女性はクルセイダーに短剣を突きつけたまま答えた。

「真か、否か…。己の目で確かめるか?」

 そう言った刹那、女性の影が膨れ上がり、女性と共にクルセイダーまで飲み込んでいく。

「ひっ! うぁ………あぁぁあぁぁっ!」

 メキメキッと嫌な音が辺りに響いた。

 なおも膨れ上がる影が足下に迫り、一歩下がるウルとクレイグ。

「……こいつだ………」

 クレイグが呆然と呟く。何のことを言っているのか、ウルにはわかった。

 十年前のザイル襲撃事件。あの時に見た真っ黒な竜の姿。
 まさに、今目の前に膨れ上がる影は、竜そのものの姿だった。

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