ドラゴン・テイル

 呆然とその姿を見上げるウルとクレイグの背後から、スキールが悲鳴に近い叫び声を投げかけた。

「お前達ッ! あれは……あれは一体何だ?! 黒竜は、死んだハズだ……!」

 少しずつ竜の影から距離を取りながら。

 それに答えたのは、クルセイダーでもクレイグでも、ウルでもない。

『そうだ。あの時我は死んだ。忌々しいお前達人間の手によって…な』

 もう女性の面影は欠片ほども見あたらなくなっていた、黒いドラゴン。

 目がどこにあるのかも分からないそれは顔の向きをスキールに向け──

『お主から、我にとどめを刺した人間の匂いがする。クックックッ…こうも早く再会出来るとは』

 そう言うと、空を大きく降り仰いだ。

 満天の星空は白みを帯び、朝を迎えようとしている。

 グルォォォオァアァァッッ

 木々を震わせ、背に生えた翼を広げ、大きく咆哮を上げる影。

「ウルさんッ!」

「ウル! くれいぐ!」

 声に視線を巡らせると、竜の影から少し離れた所に立つレナとコパンの姿が目に止まる。

「コパンッ!」

 どこにいたのか、レナの隣でコパンが怯えた表情を竜に向けていた。ウルの声に走り寄ろうとするが、レナが押しとどめる。

「レナ! 離れてろ!」

 クレイグが叫ぶ。

 小さく頷いたレナは、恐る恐るコパンを連れて後退するが、コパンはレナの手を振り切ってウル達の方へ走っていった。

_
< 223 / 257 >

この作品をシェア

pagetop