ドラゴン・テイル
呆然とその姿を見上げるウルとクレイグの背後から、スキールが悲鳴に近い叫び声を投げかけた。
「お前達ッ! あれは……あれは一体何だ?! 黒竜は、死んだハズだ……!」
少しずつ竜の影から距離を取りながら。
それに答えたのは、クルセイダーでもクレイグでも、ウルでもない。
『そうだ。あの時我は死んだ。忌々しいお前達人間の手によって…な』
もう女性の面影は欠片ほども見あたらなくなっていた、黒いドラゴン。
目がどこにあるのかも分からないそれは顔の向きをスキールに向け──
『お主から、我にとどめを刺した人間の匂いがする。クックックッ…こうも早く再会出来るとは』
そう言うと、空を大きく降り仰いだ。
満天の星空は白みを帯び、朝を迎えようとしている。
グルォォォオァアァァッッ
木々を震わせ、背に生えた翼を広げ、大きく咆哮を上げる影。
「ウルさんッ!」
「ウル! くれいぐ!」
声に視線を巡らせると、竜の影から少し離れた所に立つレナとコパンの姿が目に止まる。
「コパンッ!」
どこにいたのか、レナの隣でコパンが怯えた表情を竜に向けていた。ウルの声に走り寄ろうとするが、レナが押しとどめる。
「レナ! 離れてろ!」
クレイグが叫ぶ。
小さく頷いたレナは、恐る恐るコパンを連れて後退するが、コパンはレナの手を振り切ってウル達の方へ走っていった。
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