ドラゴン・テイル

 エルフのセルフィリオーネも、尻尾の一撃で倒れた。生死はまだ確認していないが、恐らく生きていてもしばらくは動けないだろう。

 賭けるしかない。



 ─竜の魂が眠りし場所……これは恐らくこの場所でなく、宝玉の事だ。

 ─その魂は想いとなり、想いは歌となり風に乗る……これは、思念の事だろう。
 宝玉を求め、呼ぶ事を意味する。

 ─風は歌と共に、歌は風と共に、巡り巡って戻りゆく。想いは涙となり、魂を継ぐ者を待つ……これも、宝玉の事。

 ─歌に導かれし者のみ、その涙を手にするだろう。涙は剣となり、魂を継ぐものの想いを叶える……そしてこれは、カスタール自身。

 ウルは少し考えてから、クレイグに小声で言った。

「クレイグ、頼みがある」

 ピクッとカスタールの動きが止まる。

 緊張が走った。咄嗟に、クレイグが足下にある石を拾い、遠くに投げる。

 コツ…ン……。

 小さな音に反応し、目にも止まらぬ早さでカスタールが動いた。石の落ちた辺りに体当たりをする。

 そのスキに一言だけ言った。

「あいつを引きつけろ、ほんの少しの間でいいッ!」

 クレイグはすぐに頷いた。

「頼むぜッ!」

 そう言い残すと、クレイグが走り出す。その音に気づき、カスタールが跳んだ。

 ズズゥゥンッ

 クレイグの居る場所に体重をかけて着地するが、それを後ろに飛んで避けるクレイグ。
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