ドラゴン・テイル

 冬の寒空の中、訓練直後で汗だくのクレイグを連れて、校舎から少し離れた小さな公園に行く。

 オレンジ色の逆毛にツンツン跳ねた髪。クレイグはタオルでその頭と顔を拭きながら、公園の隅にぽつんと置かれているベンチに座った。
 キスティンもその隣にすわる。

「んで、話って何? 珍しいな、キスティンが俺に会いに来るなんて!」

 珍しいというか初めてだ。

 ひょっとしたらこれは進歩なのか?!

 クレイグは、知らず知らずに満面の笑みを浮かべていた。

「えっとね、クレイグ、ウルって人とトモダチ?」


「…う………………ウル? ……あぁ、ウルね………、知ってるよ……」
 クレイグの期待とは全く違う言葉に、ガクッと肩を落としてうなだれ……
 次の瞬間、くわっと顔を上げた。
「あ、あいつに何の用?!
 ま、まさかキ、キスティン!あ、あ……あ、いつ、のこと……!」
 焦りのあまり変なところがで言葉を区切ってしまった。

「? 何慌ててるの? ねぇ、そのウルって人、今会えたりするかなぁ? 見てみたいんだー!」

「会……っ! 見…………?!」
 完璧に言葉になっていない。
 クレイグは魂が抜けたように、思考回路が停止した。

 キスティンは、そんなクレイグの様子に気づかず話をしていたが、クレイグの耳には入っていない。

 まさか、自分の好きな相手の口から親友の名前が出てくるとは思わなかった……。






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