ドラゴン・テイル

「……ちょっと!
 クレイグ聞いてるの!?」

 呆けた顔のクレイグに気づき、キスティンが怒った口調で言った。

「……あ、ご、ごめん、聞いてるよ」
 まだ少し呆け気味に答えるクレイグ。


 ……聞いてるなら良いんだけど…。


 ぽつっと呟くキスティン。

 気を取り直して再び話し始めた。

「でね、最近ずーっと気になって、自然と無意識に目が追っちゃってるって感じなのよね〜。でも、外見だけじゃ人間わかんいでしょ? だから、ちょっと話してみたいのよ」

 話を聞く度に気持ちが沈んでいくが、聞いていないとまたキスティンに怒られる。
 そう思い、クレイグはキスティンの言葉に耳を傾けていた。

「クレイグ、あの人と知り合いみたいだし、ちょーっと話させてもらいたいなーと思って」

「あいつ、かなり口べただからあんまり喋らねーと思うけど……」
 今のクレイグに言える唯一の抵抗はこれだけだった。

「うん、見た感じちょっと冷たそうだなーって私も思うんだけど、そういう人の方が一途だったりするからねぇ」

 俺も一途なつもりなんだけどな……。

 口べたとは正反対に、誰にでも話しかけている自覚のあるクレイグは、心の中で愚痴た。


 実際、クレイグはウルと張る程女性に人気だった。
 キスティンには言わないが、想いを打ち明けられたことは数知れなくある。

 だが、その全てをクレイグは断り続けていた。


 キスティンに悪気は無いのはよく分かっているが、その言葉に納得いかない。
 想いを伝える勇気の無い自分にももどかしさを感じ、自己嫌悪。


「まぁ、私の理想とは違うけど、人の好みなんてそれぞれじゃない?」

 そーだよな、女の人って多分物静かで冷静沈着なタイプが良いって人多いよな…。ウルなんてまさにそのタイプ………………

「……………………………………へ?」



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