ドラゴン・テイル

「ち、違うよ!」

 ウルは顔を赤くして首を振った。

「誰がそんな噂流してるのかと思って…」

 この言葉にリムレットが怒って言った。

「ママが嘘言ってるって言うの?!
 ウル、ヒドい。ママは嘘なんか言わないわよ!」

 ガバッと立ち上がり、歩き出す。

「リ、リム! リムレット待って!」
 慌てて立ち上がり追いかけた。

「別におばさんが嘘つきだって言ったわけじゃないよ! ただ、ちょっと信じられないなーって思っただけ………って、どこに行くの? 町はそっちじゃないよ!」

 リムレットは後ろから付いてくるウルに目も向けず、

「探すのよ、ドラゴンテイル。信じられないなら、ウルに見せてやるわ」

「えぇ?!」

 ウルは慌てて、どんどんと丘を登り茂みに入ろうとするリムレットの手を掴んで引き止めた。

「ダメだよリム! もうこんなに暗くなっちゃったし、夜はモンスターだって活発になるらしいし、危ないよ! 最近はこの辺りにだって出るって聞いたし! おじさんだってきっと心配してるよ。帰ろう」

 しかしリムレットはウルを睨みつけ、手を振りほどいて言った。

「パパが? 心配するはずないわ!」

 吐き捨てるように怒鳴ったリムレットに驚いて、思わず硬直するウル。

 リムレットはウルから少し視線を外し、一気に言葉を吐いた。

「パパね、ママが死んでから一度も笑わなくなったのよ。私をみるたびに、ママに似てる、似てるって。私をみるたびに泣きそうな顔したのよ。
 泣き顔を私に見せないように、私を避けるようになったわ。私も、その内パパを避けるようになった。もう一週間パパをみてないの」

 リムレットの大きな瞳に涙がこみ上げている。
 それにウルは気づいたが、ただ黙って利くことしか出来なかった。

「パパは、私をみるのが辛いのよ。私がいると、パパは笑えないし笑わない。私がいるから、いつも辛そうなの。だから、パパは私のそばには来ないわ。きっと、今だって私が家にいないことすら気付いてない。
 そんなパパが私を心配すると思う?」


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