ドラゴン・テイル

「今日は有り難う。おかげで楽しかった」

 夕焼けを通り過ぎ、辺りに暗がりが目立ち始める。

 キスティンは、終始笑顔を絶やさなかった。これは、ある意味キスティンの癖なのだ。

 初めて会う人と話すときは笑顔が大切。

 誰かに言われた言葉だが、その『誰か』はいまいち思い出せないが、キスティンはこの癖が気に入っていた。


「俺、キスティンと家近いし暗くなってきたから一緒に帰るよ。ウルまたな」

「おぉ」

 ウルと別れて、キスティンとクレイグは帰路につく。


「な?
 言った通り不愛想な奴だったろ?」

 公園から少し離れた場所でクレイグが言った。

「んー、確かに不愛想と言えば不愛想ね。始めから終わりまで無表情だったし」

 でも………

 キスティンは一拍おいて言葉を続けた。

「そんなにヤな感じはしないかな。確かに無口そうだけど、私の質問に丁寧に答えてくれたし。無表情だけど、どっちかって言うと……何ていうかな、感情表現が苦手な感じ? 興味なくても相手に付き合わせちゃうトコとか、何となくお人好し感が伝わってくるね」


 ……確かにそうかも……。

 キスティンの言葉が妙に納得出来る。

 クレイグは感心したようにキスティンを見た。いや、実際本当に感心していた。

「すげぇキスティン、あんな短時間でよくそんな風に見抜けるなぁ、相手の事。俺にはぜってー無理」

「えへへへ、そぉ? もっと誉めてー!」
 冗談混じりに笑いながらキスティンが言う。

「おー、誉める誉める。すごい、偉い」

 わしゃわしゃとキスティンの頭を撫でながら、棒読み口調で誉め言葉を言うクレイグ。

「何で棒読み! 嬉しくなぁ〜いっ!」

 キスティンはクレイグの肩にグーパンチしようとしたが、ひょいとかわされてしまった。

「じょーだんだって」

「避けるなっ! 殴られろー!」

「えぇ?!」

 追いかけてくるキスティンから思わず逃げるクレイグ。

 ……ってかキスティン足はぇぇ!



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