ドラゴン・テイル
レナは、早鐘のように高鳴る鼓動を抑えられなかった。
─…ウルさんが、助けて、くれた……?
レナは、まるで伝承歌(サーガ)の中の物語のように、当事者にも関わらず第三者の立場から見ているような錯覚を覚えた。
─…か、かっこいい……。
漠然とそんな事を考え、食い入るようにウルを見つめるレナ。
「……っく…そ……っ!」
男はウルを睨みつけ、痛みに耐えながら悪態をついくと、ヨロヨロと立ち上がり野次馬を掻き分けながら去っていった。
ウルは何も言わず、男の姿が見えなくなるまで睨みつけていたが、その姿が人混みの中に消えると、視線をレナに向けた。
無表情は変わらないが、その視線は先ほどまでの刺々しいそれと違い、どこか柔らかい。
「大丈夫?」
ウルがレナに声をかける。
しばらくぼーっとウルを見ていたレナだが、声をかけられてようやく我に返った。
ずっと自分の顔を見続けるレナに、怪訝そうな顔をするウル。
「は、はいっ、大丈夫ですっ!」
……わ、私ったら! なに、人の顔凝視してるのっ?! しかも、ウ、ウルさんをっ!
恥ずかしさから、一気に顔が赤くなる。
‥‥へ、変な子に思われたかな‥‥。
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