ドラゴン・テイル

 遠くで、パレードの開始を告げる声がする。


 結局キスティン達は見つからなかった。

 あの後、人の視線から逃れるように、ウルとレナもその場を後にした。

 また何か変なのに絡まれたらめんどくさいから隣にいてくれ。好きなとこ言っていいから。

 そう言われて、今レナはウルの隣を歩いている。

 ……が、祭り事に異性と行ったことがないレナは、正直どこに行けばいいのか分からなかった。

 相変わらず、ウルは喋らない。

 レナはただ、少し歩いては止まり、近場にある出店を見てから、また歩いては止まりを繰り返すだけ。

 ちらっとウルを見上げる。

 やっぱりというか何というか、無表情。

 何度となくため息を付いているのが聞こえる。


 ……楽しんでもらうのは、やっぱり無理なのかな……。


 ウルから視線を逸らし……自然と視線が俯きがちになる。

 楽しんでもらいたいと思う反面、楽しませる術を持たない自分に少し苛立ちを感じる。

 ……………………はぅ………。


 小さく、それこそ自分にさえ聞こえないほど小さいため息を漏らす。


 何か、何か言わなきゃだよね……っ!

 意を決したように、顔を上げるが…、


 でも、ホントに何言えば良いのっ?

 今度は視線だけでなく頭ごと俯く。

 さっきからコレのエンドレスだが、流石にこのままじゃ埒があかない。


 特に話題は見つからないが、とにかく話しかけてみることにする。


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