ドラゴン・テイル

 金色に輝く目は、避けたウルの姿を一瞬見失った。

 間違いなく一瞬前まで居た場所、口を開け、牙に刺さる感覚。予想していた物とは違う。

 手応えの無さ。


 瞠目する暇も無く視界に飛び込んできたのは、人影。


 その金色の瞳がウルの姿を捕らえた瞬間、ウルは唱えていた呪文を解き放った。

「グレアリング!」

 辺りに、一瞬だけ太陽以上の光が突き抜ける。もちろん目を堅く瞑り唱えている本人も眩しいがそんな事は言ってられない。


 ッギャァァァァァァァァァァッッ!


 唯一見えていたもう片方の目に鋭い痛みを感じ、影は狂ったように暴れ始めた。

 遠くでクレイグの叫び声も聞こえた気がするが、それは気にしたら負けである。

 光が消えた頃合いを見計らって目を開き、素早くその場を離れるウル。

 再び印を組み、呪文の詠唱を始める。

 次は、ただの目眩ましではなく確実に相手の息の根を止める為の魔法……。


 ─天翔る漆黒の翼に焔(ほむら)を宿せし、闇夜に生きる赫(あか)き者よ─

 生暖かい風が、ウルを包み込むように吹き抜ける。


 完全に視界を奪われた影は、体を大きくうねらせるようにもがき続けている。


 ─灼熱の炎をその身に纏(まと)い我が剣となれ─



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