ドラゴン・テイル

 再び呪文の詠唱を始める。


 ─風舞い散りし青き虚空─


 白銀のドラゴンは、大きく旋回をし、暴れる影の上に勢いよくのし掛かった。


 グギュゥァァァァゥゥゥッ!


 ズンッと言う重低音が辺りに響くと同時に、影が悲鳴を上げる。
 両目を潰され、完全に視界を奪われている影は、ドラゴンが居ることすら分からない。

 ただ、自分の体にとてつもなく重いものが乗ったと言う感覚だけ。

 影は必死にドラゴンを振り落とそうとするが、ビクともしない。


 ─虚無の狭間に生きし者よ─


 ドラゴンを見据えたままウルの詠唱は続く。


 ─汝が力を我に与えよ……─


 白銀のドラゴンは、必死に逃げようとうねる蛇のような影を一瞥、目にも止まらぬ早さでその肢体に爪を立てた。

 ギャァゥゥゥゥゥッ!

 全身を走り抜けるような激痛を感じ、影がさらに暴れる。

「……うへ………」

 クレイグの呻き声が聞こえた。

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