ドラゴン・テイル

「どうしたんだ? あっ! ひょっとして、さっきの化け物とやり合った時怪我した?!」

 ドラゴンは、クレイグの言葉に答えず、ゆっくり目を開き再びウルを見据える。

 その瞳は、とても悲しそうで……。


 =……もし、お前たち人間の誰かが私の友人を攫ったとして、私がお前を攻撃したとしても、当たり前の事だと受け入れるか?


 ─……!


 =私には出来ぬ。


 おそらく、ウルにも出来ないだろう。ウルなら、理由を聞く前に反撃をするかもしれない。

 =お前たち人間が、一人一人様々な行動をとるように、我ら一族もそれぞれに干渉はしない。

 ─………。

 =顔も知らぬ一族の為に、不意打ちのような攻撃を食らうのは納得出来ぬ。


 ─………。


 確かにその通りだ。

 リムレットを攫ったのは、漆黒のドラゴンであって、こいつではない。

 ウルは、何も言えなかった。


 少しの沈黙。物言わず見据えるドラゴンの瞳を、ウルは見れなかった。

 ふぅ……。

 小さなため息。

 =もし他のドラゴンに会う機会がある時は、そんな偏見を捨ててほしい。

 頼む……。
 そう言うと、ドラゴンは警備兵達に向き直り、再び歩き始める。


 これが、この白銀のドラゴン─ラーマとの出会いだった。


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