ドラゴン・テイル



『しかし何だ……』

 巨大な心優しい竜は、口を開いた。

 さっきから、口を閉ざし続けるウルを気遣っての事か、一人で話し始める。


『ここは景色がいいな』


 俯いたままだったウルは、僅かに顔を上げ辺りに視線を配る。

 少し小高い丘から見下ろす町には、まだ様々な光が煌々と輝いていた。


 町へ行き、最初は本物の竜の姿に怯えた町民達も、クレイグや警備兵達の説得に少しずつ心を開き始め、最終的には宴会となった。

 キスティンなど、町長すら押し退けてラーマと話していた。

 精霊士はずいぶんと珍しいらしく、ラーマも会話を弾ませていたが。

 宴も終盤に差し掛かった頃……と言うか、殆どの人間がクレイグを筆頭に爆睡し始めたのが事実だが、ウルは一人建物を抜け出しあの丘に足を運んでいた。

 ラーマもそれに気づき、何と無しに付いてきて現在に至る。

 ラーマが付いてきているのは、ウルも気づいていたが……まぁ、あの巨体で気づかない方がおかしいのだが、特に拒む理由も見つからなく放置していた。

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