ドラゴン・テイル

「このままじゃ、町が壊されちゃうよ!」

 今にも泣き出しそうなウル。
 リムレットも泣きそうな顔でモンスターの行く末を見つめる。

「ぼ、ぼく、やっぱり町に帰る! 怖いけど、お母さんやお父さんもいるもん!」

「あっ! ウル!」

 リムレットの声にも振り向かず、ウルは町に向かって走り出した。

 モンスターは既に町の入り口まで進んでいる。町の人達の悲鳴がこだましてきた。

 どうしよう……!

 一人取り残されたリムレットの目から涙がこぼれだした。

 誰か助けてっ!

 声に出しているのか、心の中で思っているのか、それさえも分からないほど、リムレットは必死に思った。

 ………お願い……っ!!


 その瞬間、強い風が吹いた。


 風は、上空に舞い上がるようにうなり声を上げる。

 だが、目も開けられない強風の中にも関わらず、リムレットの耳にはうなる風の音は聞こえなかった。


 代わりに聞こえたものは…──





 風は歌と共に、歌は風と共に、巡り巡って戻りゆく。想いは涙となり、魂を継ぐ者を待つ。



 我が歌を聴きし汝の名は……?

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