ドラゴン・テイル

 返事が無いウルをチラッと横目に見て、ラーマは続けた。

 何の当たり障りのない言葉を紡ぐ。

『人間は実に面白い。エルフ達もそうだが、自分に無い知識を技術で補っている。他の生物では容易にはできない事だ』

 我々竜族でもな、と小さな笑い声を漏らした。

 ゆっくりと顔を上げ、ラーマを見る。視線に気づいたラーマも静かにウルを見返した。

 何もかもを悟っているような紫水晶のような瞳。

 ぽつぽつと、ウルはラーマに言葉を吐いた。
 まるで、呪文を唱えるように……ラーマにと言うよりも、自分に。


 リムレットの事。リムレットの父の事、母の事。あの日リムレットの手を掴めなかった後悔と、自分の不甲斐なさから来る悔しさ。やり場の無い怒り。

 ラーマは、黙って聞いていた。

 その気遣いが、ウルには何より有り難かった。


 ウルの言葉が途切れ、二人の間に僅かな沈黙が訪れる。


『……漆黒の、ドラゴンか……』

 沈黙を破ったラーマの声は、大きく聞こえた。


「知ってるのか……?」

 ウルは思わずラーマを見上げ、問う。

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