ドラゴン・テイル
『竜にも、個々の考えを持ち、意志を行動に移すものもいる』

 視線を町に向けるラーマ。


 竜にとっては、ほんの小さな物。

 少し強めに息を吹けば簡単に倒れてしまう物ばかりの集落。

『どれだけの人が、精霊が、生き物達が、あの戦争で命を落としただろう』

 終結までにどれだけの犠牲が出ただろう。


『あの戦争は、人間や精霊達だけでなく我々竜族にも大きな傷を残した』

 ラーマの言葉に、僅かに息を飲むウル。

 そもそも、竜族は支配こそしたが戦争をしかけたのは人間達だ。

『世界を支配した竜族、だが、全てがそうだった訳ではない』

 今更言うのも何だがな……と呟いた。

「……どういう意味だ?」

 話が見えない。リムレットを攫った竜と大昔の戦争に接点があるのか?

『さっきも言ったが、その昔、竜の属性は一つだった。だが、その中でも黒竜の姿は稀だった。殆どが紫竜。同じ闇の属性だが、黒竜には足下にも及ばなかった』

 ラーマがウルに視線を移す。紫の瞳。







『黒竜は、その膨大な魔力で紫竜を操っていたのだ』



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