ドラゴン・テイル
ウルはかける言葉が見つからず、ラーマも紡ぐ言葉が見つからない。
沈黙が辺りに満ちた。
風だけが、そんな二人を包み込むように流れ去る。
かつて、世界を支配した黒竜にリムレットは攫われた。
もう、絶望しか無かった。そんなドラゴンに攫われたリムレットが生きている事などあり得るだろうか。
─奇跡でも起きない限り、無理か…。
リムレットが姿を消してちょうど十年。ウルの心に諦めの色を宿すには十分な歳月だった。
『黒竜がこの世界に復活したとなれば、我々竜族も黙ってはいられない』
ラーマの言葉も、ウルには届かなかった。
「リムレットは、もう戻らないんだな…」
言葉と共に、涙もこぼれそうで。
ウルは深く俯いた。
『………そうとは限らない』
低く、静かに呟くラーマの声に、はっと顔を上げるウル。
『そもそも、我ら竜族は人間を故意に殺したりはしない。黒竜も例外ではない』
その言葉に、ウルの止まりかけた思考が動き出す。
『もちろん中には好戦的なドラゴンもいるが、そんな奴らでも余程の事が無ければ先に攻撃を仕掛ける事などしない』
─そうか……六千年戦争も人間達が仕掛けたものだ……。
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