ドラゴン・テイル
「案外、クレイグが行く前に手伝いに行ったんじゃない?」

「いーや、ぜってー違う。あいつはそんな奴じゃない」

 自信満々に首を振るクレイグ。付き合いの長いクレイグが言うのなら間違いは無いだろう。

「ふーん。じゃドコ行ったんだろうね」

 そう言いながら、キスティンは空を見上げた。

 黒い雲が低い位置を流れていく。

 ─雨、上がりそうにないなぁ……。

 ふぅ、と小さく溜息を落とす。



 昨日、建物が倒壊してきた時、クレイグが身を挺して庇おうとした瞬間を、キスティンはふと思い出した。

 あの時は咄嗟に風の精を召還したけど、もし、自分が精霊士では無かったら……。

 ブルッと一度身を震わせ、頭を振る。

 クレイグもキスティンも、まず助からなかった。


 ……だけど、何故………?

「………何で……クレイグはあの時逃げずに私を庇おうとしたの……?」
 クレイグ一人なら、逃げれたかもしれないのに。

「へ?」

 不意に問われた言葉に、キョトンとした目を向けるクレイグ。

「昨日、建物が倒れてきた時の事よ。私が風の精を呼ばなかったら死んじゃってたんだよ?」

「あ〜……あぁ! って事はあの橙色っぽい透明の奴らが風の精なのか?!」

 クレイグはその時の事を思いだし、勢いよく逆にキスティンに問い返した。

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