俺の彼女は宇宙人
「ここ、あたしんち」
と、繋いでない方の手でさおりは指差した。
「そっか」
俺は、そういってゆっくり手を離した。
急に涼しく感じたので、ポケットに手をつっこんだ。
「今日は、ありがとな」
「うん」
「なんていうか…」
「これから宜しくお願いします」
さおりは、ぺこりと頭を下げた。
慌てて俺も「こちらこそ」と頭を下げる。
「それじゃ、またね」
「おう」
さおりは大きなマンションへと入っていった。
俺は一歩引き下がった。
開いたガラスのドアの中へ入っていったさおりは、改めて振り返り、軽く手を振った。
「じゃな」
小さな声で応える。
にこっと笑ってさおりはエレベーターに入っていった。
俺は一息入って、帰路を歩き出した。
「よっしゃ」
近くにいた野良猫が、はいはいよかったねと、さげずんだような目でちらっと俺を見た。