シムーン
まだ眠たそうなその声に、俺の心臓がドキッ…と鳴った。

やっぱり、まだ信じられないな。

彼女を連れ去って、バーで気持ちを伝えて、ホテルで抱きあった。

一瞬かと思うくらいの早い出来事だったのに、信じられない気持ちがいっぱいだ。

そりゃ、愛しい人が目の前にいるんだから。

俺の腕の中にいるんだから、信じられないと思っても仕方がない。

「――真希」

名前を呼んだ瞬間、彼女は恥ずかしそうに顔を紅くした。

昨日はあんなに呼んだのに、まだなれていないのか。

そう思っていたら、
「――勇」

消え入りそうなくらいの小さな声で、彼女が言った。
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