シムーン
「真希さんとつきあう前、あなたに思っていた人がいたってこと」

ドクンと、心臓が奇妙な音を立てた。

この女は何を言っているんだ。

「堺さん、って言う女の人でしょ?

その人が真希さんに似ていることも、あたしは知ってるわ」

「…何が言いたい」

「別に、特に意味なんかないわ。

ただ、かわいそうだなって思ってだけよ。

真希さんが堺さんの代わりとしてあなたとつきあっていたら、かわいそうだなってね」

彼女はうっすらと口元に笑みを浮かべた。
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