シムーン

正正堂堂ー守りたい人は1人で充分ー

唇に触れる温かい感触。

抱きしめている小さな躰。

鼻に感じる甘い香り。

俺の腕の中にいるのは、真希だった。

俺の最愛の人。

俺が守りたい人。

唇が離れる。

「――勇…」

濡れた瞳を俺に向けながら、真希が小さく呟いた。

愛しくて仕方がない。

抱きしめる腕に、力が入ってしまう。

「勇、痛い」

「あ、ごめん」

真希に言われて、俺は躰から腕を離した。

「真希、悪かった」

俺は言った。
< 159 / 176 >

この作品をシェア

pagetop