シムーン
「大事なはずなのに、俺はお前を傷つけた」

大事だから、守りたかった。

でも、傷つけてしまった。

「けど、真希しかいらないのは本当だ。

真希しか愛せないのも、全部本当だ」

「…ウソじゃないの?」

小さな声で、真希が聞いてきた。

「ウソじゃない、本当だ」

「勇…」

真希の目から涙がこぼれ落ちたので、俺は頬に手を伸ばすと涙をぬぐった。

「だから、もう泣かないでくれ」

守りたい人は、真希1人で充分だ。

愛したい人も、真希1人だけだ。

ふと、背中に視線を感じた。

そう言えば、ドアを閉めていなかった。

そう思いながら、俺は振り返った。
< 160 / 176 >

この作品をシェア

pagetop