シムーン
それが、蜘蛛である。

蜘蛛の罠にかかってしまったら、逃れられない。

「――そう言えば」

その声に、私は後ろの方に視線を向けた。

「名前、聞いてなかったな」

私と目をあわせるなり、彼が言った。

そんなものを聞いてどうするの?

もう、会わないかも知れないって言うのに…。

そんな私の心を見抜いたのか、
「また、会うかも知れないから」

彼が言った。

一体どこにそんな自信があるのだろうか?

それでも名乗らないでいると、彼が言った。

「俺は、森藤勇(モリフジイサミ)」
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