シムーン
この手に残っているのは、彼女――中原真希の髪の感触あった。

パーマがかった茶色の髪が、俺が片思いしていた人と重なる。

髪の色は違うけど、パーマなのは一緒だ。

落ち着かなそうにしていた中原真希が、あの日出会った彼女と姿が重なる。

中原真希が彼女に見えて…つい、触れてしまった。

彼女の髪に、触れてしまった。

触れたのは、ほんの出来心である。

とっくの昔に終わった片思いなのに、自分は未だに追いかけている。

もっと早く行動していれば、よかった…。

後悔ばかりで、煮えきらない自分を心の底から憎いと思った。
< 28 / 176 >

この作品をシェア

pagetop