シムーン

純真無垢ー瞳の奥をのぞかせてー

足音が聞こえたので、俺はその方向に視線を向けた。

フワリと舞う茶色の髪が視界に入った。

見覚えのある後ろ姿――俺は、彼女だと思った。

それは、キレイな後ろ姿だと思った。

キレイ過ぎて、汚すのがもったいないくらいにだった。


都会の夜空は寂しくて仕方がない。

何しろ、星が見えないからだ。

「――無駄に明るいんだよ…」

眼下の明かりを見下ろすと、俺は一言呟いた。

色とりどりの小さな宝石を散りばめたような夜景があった。

上から見下ろせば美しいものの、下から見あげれば邪魔も同然だ。
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