シムーン
「これでわかっただろ?」

そう聞いた俺に、彼女が首を縦に振ってうなずいた。

「なら、いいな」

「あの」

「何だ?」

「…ありがとうございます」

お礼を言った彼女に、俺の心臓がドキッ…と鳴った。

少しだけ口角をあげて、彼女は微笑んでいた。

「どうして何だろうな?」

俺は言った。

「えっ?」

彼女が聞いてきたけど、俺はごまかすようにして笑った。

自分でも、どうしてだかわからない。

彼女の前で、こんな気持ちになる俺が自分もよくわからない。
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