シムーン
その音にも驚いたけど、ドアを開けた人物にも驚いた。

南野淳平――名前を聞きたくないくらいに、俺が憎んでるヤツだ。

彼は俺たちを見ると、驚いたように目を見開いた。

そりゃ、そうだな。

こんなバカなことをしてたら、驚かれるよな。

俺の手は、彼女の腰を抱いている。

彼女は、俺の胸の中だ。

こんな格好で、こんな状況で、何もないって言う方が間違ってる。

どう見たって、何かあったと思うに決まってる。

「――何をしてる?」

少しだけ彼が間をあけたのは、この状況を少しでも理解するためだろうか?

そっと、俺は彼女の腰から手を離した。
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