アリィ
第四章
事件
アリィと『親友』になって、一年とちょっとが過ぎた。
空気は澄み、風が冷たくてコートが恋しい季節。
学校は間近に迫った文化祭の準備であわただしい。
まあ、文化祭といっても出店やバンド演奏のような一般的にイメージされるものとはかけ離れていて、
合唱部の不協和音を聞かされたり、生徒会役員による風紀向上目的の目も当てられない劇を見せられたり。
あとは生徒がそれぞれ進路学習や各教科で研究したものをまとめた紙が廊下に貼ってあったりするだけ、
我が校の文化的なお祭りとは、そんなお粗末なものだった。
私は、アリィと一緒に『生活排水が自然環境に及ぼす影響』について調べることになっている。
「教科書に書いてあること写せば終わりだから、簡単でいいよね」と、アリィが決めたのだ。
それなのに、内容をまとめるのも、グラフを作成するのも、それを広用紙に書きあげるのも、すべて私が押しつけられている。
つくづく他力本願な奴だ。
最近のアリィといえば、お絵かきに夢中だ。
文化祭の準備のために与えられた時間になると、ノートを取り出し私を放ったらかして熱心に絵を描き始める。
その内容は、すべて『ギャル』。
金髪縦ロール、パンダメイク、短すぎるスカートに魔女のような長い爪……
似たような『ギャル』の絵を何枚も何枚も描いている。
それでも飽き足りないようで、暇があれば雑誌で見た『ギャル』のファッションについてウンチクをたれてくる。