アリィ
すごく、胸騒ぎがしていた。
「ねぇ何かおかしいよ、コレ。絶対何かあったんだって」
不安を吐き出したくてアリィに耳打ちしたけれど、アリィはお絵かきに夢中で気のない返事すらしてくれない。
カリカリカリカリ……
無心にシャ-ペンを動かす音に、私の不安は更に膨れていく。
それをあざ笑うかのように緊張感をなくしたクラスメート達は、悪乗りを加速させ、
「紙飛行機大会!」
なるものを始めた。
「いけぇ!」
私の脇をいっせいに紙飛行機が飛んでいく。
ノートの切れ端で乱雑に作られたらしいそれらは軌道が定まらなくて、行きたい方向に進めたものはほとんどいなかった。
大多数がすぐにぱらぱらと散っていった中、ふらつきながらも飛び続けている一機に、みんなの視線が集まった。
まっすぐに飛んでいたかと思うと急降下したり、はたまた上昇したり……その一挙一動に歓声があがる。
「すげー飛ぶな、あれ!」
いつ、落ちるのだろう。
行方を追っていたら、ついに紙飛行機は教室前方のドアにぶつかった。
落ちた。
そう思ったのと同時に、ドアがいきなり開いた。
そこから現れたものを見た瞬間、心臓が半分に縮んだ。
頭から真っ黒な液をしたたらせた女が、教室に入って来たのだ。