アリィ


ノアは、偉そうに腕組みをしてドアにもたれかかった。


そして、不敵な笑みを浮かべアリィに言った。


「アンタも、ウチらと一緒に行かない?」




アリィの表情が、みるみる輝きだす。


あのときの言葉が、気持ちが届いたんだわ。


そんな喜びをまき散らしながら、意気揚々と席を立った。




「待って!」




私はとっさに引き止めていた。


だって、ノアの真意がまだ分からないし。


何かひどいことをされるかもしれないし。


今は先生が来るまで教室で待機してなきゃいけないし。


それに、それに……とにかく行っちゃダメだ。




しかしアリィは私の方を見向きもせずに、列の少し乱れた机の合間をぬって、

多くの奇怪の目を気にもとめず、ノアに駆け寄って行った。


高い位置で結んだポニーテールが、左右に跳ねながら遠ざかる。




痛みが、走った。


今までなら、アリィがどうなろうと別にいいじゃない、と強がっていられた。


でも、今は違うんだ。


そもそもアリィが私から離れて行くなんて、考えたこともなかった。


そう、アリィから寄って来たのに。


私を束縛していたのはアリィだったのに。


なのに、私を置いて行くのか。
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