アリィ
「アリィ!」
前のめりに立ちあがって叫んだけれど、その後ろ姿はノアと共に廊下の向こうへ消えていった。
どうしよう、どうしよう……頭の中がうるさいくらいの音を立てて混乱している。
その音に気を取られていると、逆に周囲の静寂が耳について我に返った。
負けないで。
あの日そう叫んだアリィに向けられていたのと同じ種類の視線が、私を刺していた。
愕然とする。
私は、嫌われ者を押しつけられている可哀想な子、なんかじゃなかった。
決定的に突きつけられた現実。
私もアリィと同じ、嫌われ者の、退け者だった。
そんな片割れが、行ってしまった。
追いかけることもできない。
だって、アリィは私を見ようとしなかった。
まともに頭が回らない。
痛いほど冷めた空気の中、打ちひしがれた私はうつむいて、音もなく座ることしかできなかった。