アリィ
そんなことを聞いたところで、どんな答えを期待しているというのだ、私のバカ。
後悔する私を、アリィは何も言わずに横目で確認しただけで、すぐにうつむいて動かなくなった。
黒目を大きく見せるコンタクトをしているらしく、異常に白目の比率が少なくて化け物のよう。
それよりも、今まで見たこともないその冷たい態度に私は震えた。
私はあなたと違う世界の人間なのよ、容易く話しかけないで。
まるでそう言われているようだ。
手足の先が、だんだん冷たくなっていく。
何なんだ、これは。
「さぁ、遅くなっちゃったけど、授業を始めましょう」
いつも通りを装って麻生先生は笑うけれど、目がまったく笑えていない。
こんな化け物が教室にいたのでは、いつも通りなどできるわけがないのに。
ほら、あまりのことにみんな呆然としていて、浮き足立っている感情が手に取るように分かる。
何より今、私の心はこんなにもちぎれている。
平静でなんていられない。
どうして?
どうしてこうなった?
授業を進める麻生先生の声なんて、届かなかった。