アリィ


何もできないまま、一日が終わった。


アリィはずっと動かなかった。


私も隣の席に座ったまま動けなかった。


みんな遠巻きにアリィを見ていたけれど、その横で打ちひしがれている私だって奇怪の目で見られていたのだろう。


終礼が終わると、アリィは麻生先生に連れられて教室を出て行った。


本来の私なら、いくら気になったとしても、何か行動を起こすなんてできなかったに違いない。


でも、見つけてしまったのだ。




アリィのカバンにくくりつけられたままの、薄汚れたピンクのクマを。




あれは、私とアリィの『親友の証』。


それをまだ身につけているということは。……




私は立ち上がらずにいられなかった。


立ち上がって、動悸をおさえながらしばし逡巡して、冷静になれ、と呪文のように口の中でつぶやきながら、

呼吸を整えてアリィと麻生先生の後をそうっと静かに追いかけ始めた。
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